煉丹術の世界 不老不死への道 加藤千恵ほか

本書は古代中国での丹術についてその詳細を図や参考文献画像で解説しながら理解を深められる作品である。

丹術という単語を聞いたことはあるだろうか。丹術とは、古代中国での不死への憧れのもと考えられた一種の古代学問的要素を持つ煉丹術である。煉丹術で出来上がった丹薬は摂取すると不死になる(=仙人になれる)という伝説であり、その性質により内丹術と外丹術に分けられる。内丹術とは体の中で陰陽の要素を融合(存在する物質ではなく気や力といった目に見えないようなもの)させることにより体内で丹薬を作り出す方法である。一方、外丹術とは丹薬を鉱物を加熱することによって生成し、それを体内で摂取することによって不死を目指すというものである。

本書では内丹術、外丹術の成り立ちや具体的な方法、その他氣功の発生などを古代中国の文献の解読をもとにした文章で解説していて、初学者でも大変理解が容易になっている。丹術の歴史という学問は性質上かなりディープなイメージであるが、かみ砕きつつも詳細な解説により親しみやすく理解しやすい学問としてとらえられる印象を受けた。

コアな領域ではあるが当時の古代中国情勢や事情も本書を読むことにより理解が深められることから、そのあたりに興味がある人にはぜひおすすめしたい一冊となっている。

逆に、中国や古代中国事情に興味が全くない人にとっては知識の披露をひたすら眺めているだけの読書時間になってしまうから、あまりお勧めはできない。