ちょっと気になる社会保障 権丈善一

社会保障という、普通に生活をしていたら学問、教養、知識として身につく機会はかなり少ない分野について、世の中で通説とされている年金に関する理論の誤りをまとめた一冊。年金制度が崩壊する、とテレビの中の経済学者が言っているのをだれもが1度は耳にしたことがあると思う。現在の庶民の情報摂取は多様化してきているとはいえるが、いまだテレビの存在は大きい。そんなテレビの中で「誤情報」を流したらどのように世論は動かされてしまうのか、そんなことも考えさせられるほど、本書の内容は正確かつ論理的であった。私は権丈研究会に所属したことにより、現段階での知識は人一般人よりも少しだけ社会保障について詳しいつもりであった。しかし、本書を読破したとき、自分の知識の浅さを思い知らされた。それほど本書の内容は濃く深く、本書を読破した一般人のほうが社会保障研究のゼミに入会したばかりの私より博識であることは明確であった。知識補給コラムにより、全逓知識が不足している方にとっても読みやすい内容になっていることから、社会保障を専門にしている研究者以外にすべての学生、一般庶民に読ませて損はないと言い切れるような内容であると感じた。知識の定着というのは人に安心感を持たせる。知識があるということはない人に比べて少しだけ先の未来を予見できるということであり、それは今を生きる上で安心へとつながるというわけである。大げさな書き方だが将来を不安視している人にはぜひ読んでもらいたい一冊。